2014-01-01から1年間の記事一覧

空白の恩寵について

ーー要するに、美は到る処にあります。美がわれわれの眼に背くのでは無くて、われわれの眼が美を認めそくなうのです。 美とは、性格と表現です。 ロダン「ポール グゼル筆録」より(高村光太郎訳) 『星の王子様』という童話には、「大切なものは目に見えな…

(ついに)書かれなかった日記

日記を書いている少女 しかし書くことが何もない 書くことがない日常が 貧しくて苦しいのだ もともと書くことなんてなくても ひとは生きていける 日記にトピックを記さなくてはいけないなんて 正直めんどくさすぎる そんなことを思っていたら 熊が突然やって…

愛よりも傘がほしい

「今日も街は憎しみで涙あふれる」 生き残るための抒情は サロンパスとして マツモトキヨシで売られている 「純」という文字が 人工知能の中で エラーとして認識される 間違いだらけのコメディとしての一生 ひとが ひとのかたちをして ひとを演じている 予想…

気付いた時には気付かずにそこにいる

可愛い時計が 皺くちゃのウサギの顔をして 壁に掛けられている 世界の表情は 針が動くたびに 変化したがる 「1秒を1秒以内に表現しなさい」 そのような問題を出されて 誰しも途方に暮れて 仕方なく大人になった 「一生を一生の中で表現しなさい」 そのような…

山椒魚再び

山椒魚は悲しんだ 「あー、もうちょっとマンガ読みたかったわ」 困難が襲う夜 山椒魚はじっと 静まりかえった世界に ただじっと くたびれた車輪の中心のように 居座っている 我慢の足りない愚かさを 生き物は皆 辛く背負いながら 屁のような冗談に 時に寛容…

福岡近代詩人倶楽部

福岡近代詩人倶楽部の会合で「どうして、皆さんは近代を引き摺るのですか?」と質問をした。「全ての道は近代へ通ず」と中原中也のようなジジイに説教され続けた後で、おじさんおばさんから近代的な批判を受けて、近代的にくたびれ果てた。とりあえず、酔っ…

地味な収縮

橋の上で 呼びかけられる時に 僕は一度破れることにする 破れると 地味に収縮して 必要以上に 自分を証明しなくていいから そして虫として 誰かに 飛ばされる 空中で 馬鹿なことを考えたり

イチタロウ

あなたのための夕日 とても辛かった一日が ようやく終わりかけている まがごとを呼ぶのは光か闇か 空の応答は誰かの嘔吐へと変わり 顔のないひとたちが 僕を真似て歩いている街 つまり孤独が増す秋の黄昏 亀のイチタロウが のをそりのをそり ひからびた世界…

秘密

そのじゃがいもが 世界の秘密をぜんぶにぎってるよ それをたかしがにぎっているから たかしはすげえよな

とおるくん

とおるくんは ねこがまえからきたので ねことぶつからないように ていねいに かべぎわによけることで ねこにとってとても いいかんじのひとになった

午前二時に突然透過する

ことばをもたない夜空はいよいよ ふさがれないかなしみをふさいで ふたりの星をやさしくつつみこむ 地下でねむっているからだ恋しや 天使と一夜限りの対話をしたいな うつくしい声が胸をよろこばせる つよくむすんだ約束が星みたいさ 物語のカフェにてゆっく…

平凡が浮かび上がる場所で

ウツセミの図録を買い求める 真夏の給水所 溶けた時間がハーブティーを 飲んでいる 記憶は君のからだに記録され カワセミたちに 創造の世はいかに苦しいかを 教えられた

あの時もキリン

「ありったけの米をつめろ」 米屋にキリンが来る 浮世の昼は時間がすすむのが 連載漫画の展開くらい遅い 「退屈がオクラのように緑だ」 下町のスフィンクスが あなたに人生について質問する あなたには答えるちからが 足りなくて 「給水所はどちらですか?」…

そのえらそうぶったシナプスに俺らは(66現代詩プロジェクト旗揚げイベント朗読テキスト)

出会いは単純明快なドキュンです 「ウシジマ、てめえ比喩だけは使うんじゃねぇ」 配管工事をやっているうちに 配管こわしたくなるのが俺らだから あはははは そのえらそうぶったシナプスに俺らは もう戻れない銀河の孤独を刷り込んでゆく 「おう、あるがまま…

夕立ち前の部屋での愛撫

「澄む」ということばは ことば以前に存在したから あなたの瞳は今澄んでいる

以下はどこかに書いておきます

君の「どーの」の かわいすぎる耳たぶをなめて 不思議な町で唇が腫れ上がる 君の「あーの」の 皮膚の下で見る夢は 万華鏡の波打ち際に 君の「こーの」の スタンプをこころ全体に押して 接着する部分は全て恋のために 君の「そーの」の ひたすらに機関車は愛…

旧式

旧式の世界に軽く 「さよなら」を伝えて 沈黙の山を登るあなたに 澄み切ったわたしを託す 正直に全てを話す時の 口の動きが 息が出来るほど鮮やかだった ひとのいない真夏に はだかの鳥たちが つぶれない愛を呟く あなたとわたしは 「在」という記号を 今こ…

詩の子供

誰かがその子に 声をかけた 「ありがとう」 誰かは分からない 線路の近くだった 草が生えていた 僕らはいつも死んでいた 愛を知らない建物に 人形が飾られている 深い沼の底でおかしくなって 井戸の近くで足を捨てた 秘密の壁に何かが書き残されている おぼ…

地上にない絵画

ことばなき噴水 がある場所 でひとがたおれている 自叙伝を書く老人 が世界を横切る青空 に線と輪郭をあたえる どこか で子供たち が秘密 をうばい合う 地上 にない絵画 を見ているあなた が今日も世界を通過してゆく

世界の終わり

ひとがやりたいことをする背後には、それがなければ、自分が自分を保てない恐怖が存在している。日常的には、それが意識されないことの方が多いが、一度意識してしまうとそこから離れることはかなり困難である。特に、「表現」の現場においては、「自己表現…

作品「この木 何の木 ふつうの木」(平地智個展「それは詩なの?」2月2日イベント)

僕はずっと平凡な人生でした 平凡な家庭に生まれて 平凡ファーザー、平凡マザー、平凡ブラザーさとると平凡な時間を過ごして 自分が今後平凡であり続けることを平凡に理解して 人生を平凡に終わる決心までした少年の僕の平凡でした 「俺が貴様に伝えるべきこ…

作品「それは何なの?」(平地智個展「それは詩なの?」2月2日イベント)

私たちは日常の中で無意識に踊っていることばのかけらだ 踊っていることばの悲しみを背負い生きているplanetだ (いきものが深くもぐるために海はますます深くなってゆく) 海底で眠る地球儀の中に秘められた解けない謎を解いてゆく時に 遠い場所で手を振る…

2014年2月7日ブログ再開

皆様(見ている方全てに感謝の意を込めて)2年のブランクを経て、ブログを再開することになりました。 FacebookやTwitterが中心になっていましたが、書きたいことが次第に沸いてきて、 まとまった文章や作品をこちらで発表していこうと思います。 以後は、ホ…