2019-01-24 虫を蹴りに 思い出だけに生きるひとが死ぬ そして かたちは向こう岸で針金として曲がる そろそろ 友達が死ぬ季節だから まるいドーナツを頬張り雷鳴を聞く 缶の中で暮らすひともいて 夕陽には文字の気配さえ映らず あの日生きていたことをただ伝えたくて 言葉は湯船の中で消えてゆく 路面電車にいる幽霊たちが ペットボトルのお茶をにぎりしめて その先にある渇きに備えている 犬の慰めが猫に噛まれる時間の反転の中で 泳いでいるうちは溺れないと 冒険家は信念を脳につむいで 実家の自転車が盗まれていないか気になり始める