2016-01-01から1年間の記事一覧

修行中の世界

アホのように晴れ渡る空から 垂れてくる醤油がある たくましく生きるあなたは知らない 本気で嘘をつく時の本気が嘘でないことを 蜘蛛のお尻を撫でる爺が教えてくれる 「ブスなあなたに一目惚れしたよ」 踏まれた土が雪にいじられて 踏まれた土が雪にいじられ…

空間

殺人茶碗が お茶をはこぶ 無関心撮影班が 待つイノセントルーム ループもワープも 輪廻の爺婆の性欲の前で 完全無力で神様は会社早退 あたらしい生命に名前を付けて 「こいつ、アホですわ」 関西の猫が関東の猫の 尾を焼くような厄介な状況 笑いの生まれない…

恐怖の秋

誰かさんが見つけた 恐怖の秋見つけた 恐怖はことばではなぞれないつめたさ そのつめたさは皮膚の奥に 皮膚がたどれない感覚をあたえて ああ 恐怖 ああ 恐怖 傷口がある幽霊は存在しない 傷口は生きている者だけに開く 傷口がないのに痛みがじわじわつたわる…

あたらしい朝

わたしはまよいながらあるく あるきながらまよう まようからあるくかいすうがふえる あるくからまようかいすうがふえる ねこはしずかにかたりかける 「どのようなまよいもあるきのなかではむいみだ」 むいみなことはまよってもいみがないから いみがないまよ…

あゝ 青春ゆるりとゆるるりと

痒みをおさえるために詩を書くことを勧められた おかげで青春はなくなった 詩に奪われる人生の残金支払いは どの窓口でおこなえば ただしい朝が来るのだろうか 悲観を彫刻する近代のひとが 前歯を折りながら笑っている 空想をおやつにしていた思い出が 下水…

不自由な造型

あなたは誰ですか? おばあちゃんですか? おじいちゃんですか? 不自由な造型として 怪獣の前に差し出された 元祖栗饅頭ではありませんか (「元祖」って何やねん) 半分は死んでいるので自由だし 虫の息 掻き毟り過ぎた夜の向こうに 気分を害するような朝…

初老に告ぐ

朝起きたら詩人が死んでいた たぶん死ぬだろうなと思っていた 詩人はもともと癌を患っており 何度も食べ物をくちゃくちゃして 吐き出すこともしばしばだった 煙草も酒も女も最後までやめられず 典型的な近代の文学青年を気取り 時給730円(税込)の清掃をし…

河童の勃興

どっこいしょ 俺たちは河童だ YEAH うんざりするくらい 頭はお皿のように 磨かれている河童だぞ YEAH 帝国で生まれて 帝国で死ぬのが 俺たち河童なのさ YEAH どっこいしょ 俺たちは河童だ YEAH 胡瓜を食べてやるぞ 胡瓜を寿司で包んだら 「カッパ巻き」と呼…

方舟

頭が痛くて学校を早退したら いつの間にか方舟に乗っていた 他の乗客も世界からはぐれたがっているように見えた 顔はない 「希望が好きな方はこちら」という看板の裏で 猫が笑っていた 顔はない 神経の尖端から蟻のようなものが 走り出しては 泥の中で踊る羊…

ふつうの男

その男のことを「神」と俺は呼んでいる それは彼があまりにも「ふつう」だからである 彼はある派遣会社に勤める32才の男だ 趣味は野球観戦とドライブ 恋人はいない 自分のことを「ふつう」と呼ぶひとは多いが その「ふつう」は彼/彼女にとってのそれであり …

詩集を買いに

おじいちゃんが書いた詩が 本になったというので おばあちゃんは書店へ向かう デス・ロードをバイクで駆け抜ける 白塗りのひとたちが 何をしゃべっているかわからない いきなり話しかけてくる 「俺を見ろ」 「うるせえ」 自己を神格化するアホをまともに見る…

文体の憂鬱

「お前が書くものは悉く詩ではない」 批評犬に指差されて 笑われるレストラン 「あ、大丈夫っす、自分ら趣味ですから」 フリードリンク制ではなく コーラ1杯600円程度の請求が続く 非正規雇用の神々は 線路上に立っているような時間を過ごす 「パフェとか食…

はいからはくし

はくちどろどろ はいからどろどろ ちのようなぽえじー しのようなめろでぃ ぼくときみがであうさかでは きみはぜったいにわらわないし ぼくはわるいよくぼうむきだし ぶんらくのようにしはいされて はくちどろどろ はいからどろどろ ちのようなぽえじー しの…

初日の顎

俺たちは 顎が砕ける日まで 本日から 自由を走るブリキの おじさんおばさん 物欲に呑まれて 性欲に呑まれて 酒と艶歌と通販で 人生カレンダーの 余白埋めてますわ 走れジジイババア グラウンドは人生より 長ぇからよ鬼監督は 蕎麦食べながら つまらない詩集…