昆虫からぶら下がる

訛りがゆるされる
場所で
口笛を吹く
寒空を舐めながら


カラカラに
乾燥した人生を
ほおばりながら
地底でギターを奏でる


少年も
少女も
おとなになる前に
死ぬようなのです


浮世ですすられる
うどんの総量を
落語家が
計算している


大音響の地底
猫が
藁のような藁を
ことばのようにつかむ


バックミラーに
君の
お父さんやお母さんが
うつっているようだね


昆虫は
ことばを持たない羊です
お迎えのこないこどもたち
あなたたちはまいごです


回転トビラに
閉じ込められた
ホテルのベルボーイに
輪廻の沈黙が鳴り響く


耳をすませながら
銀河で死ぬる
スマホの墓で
星の夢を見る昆虫たち


不眠
後味の悪くない
悲劇を
死の余興にして


ひどくやつれているね
死に顔を
とびきり洗顔してくれ
魔女たちの出勤うるわしく


ことばに
飽きた羊羹が
売れ残りを楽しみながら
昆虫からぶら下がる