詩集を買いに

おじいちゃんが書いた詩が
本になったというので
おばあちゃんは書店へ向かう
デス・ロードをバイクで駆け抜ける
白塗りのひとたちが
何をしゃべっているかわからない
いきなり話しかけてくる
「俺を見ろ」
「うるせえ」
自己を神格化するアホをまともに見るために
両眼がある訳ではない
ちいさな爆弾を預けて立ち去るおばあちゃん
カッコいい
そして白塗りのひとはきたない死に方をする
爆音の中で砂漠を駆け抜けるおばあちゃん
「緑の地」と呼ばれる書店を目指す
水を飲んでると
栗の棘のような車がやって来て
訳のわからないことばで語るひとが来る
「てめえは詩人かよ」
デス・ロードは詩人が生き残れるような場所ではない
おばあちゃんは乱射しながら駆け抜ける
罪が罪を笑うくらいに正義はない
正義になりたい奴は自由に名乗り出て生きればよい
しばらくして悪の王(中二病)がおばあちゃんに
殺される
歓喜するひとたちが水で乾杯する岩場
「希望を抱くことは絶対にするなよ」
そしてようやく書店「緑の地」
おじいちゃんの詩集を手に取る
「高いな」
おばあちゃんは詩集を買わずに
元来た道を戻る
詩集はどれほどの困難をくぐり抜けた戦士にも
高価に感じられる
おじいちゃんの詩集はまだ世界で
一冊も売れていない
売れる気配がない
おじいちゃんはつぶやく
「俺はマックス」